『エリザベス』『恋におちたシェイクスピア』ジョセフ・ファインズ 『最後のランナー』

INTRODUCTION イントロダクション

ヴァンゲリスが作曲した荘厳なメロディに乗せ、1924年パリ・オリンピックの陸上競技で金メダルに輝いたふたりのアスリートの実話を映画化した『炎のランナー』(81/ヒュー・ハドソン監督)。アカデミー賞で4部門を制したこの不朽の名作は、当時のイギリス社会を格調高くきめ細やかに描いた映像美、躍動感あふれる競技シーンはもちろん、主人公たちの内なる信念と尊厳に光をあてたヒューマン・ドラマが観る者の心を揺さぶった。とりわけスコットランド人宣教師の息子であるエリック・リデルが、宗教上の理由で日曜日に行われる100メートル走への出場を辞退し、400メートル走で劇的な優勝を成し遂げたエピソードは、そのストイックな生き様とともに多くの映画ファンの胸に熱く刻まれた。

しかしリデルには、知られざる“その後”の物語があった。オリンピックで一躍イギリスの国民的ヒーローとなったリデルが、大学卒業後まもなく赴いたのは、自らの出生地でもある中国の天津。無限の可能性を秘めた若きランナーは、スポンサー契約を申し出てきた数多くの有名企業の誘いを断り、なぜアジアの新天地へと旅立ったのか。『最後のランナー』はその驚くべき真実に迫り、リデルの波瀾万丈の軌跡を今に伝える感動作である。

パリ・オリンピックで金メダルを獲得したエリック・リデルが、その翌年の1925年に中国の天津へ旅立った。敬虔なクリスチャンである彼はアスリートとしてのさらなる栄光を追い求めず、両親と同じく宣教師として生きる道を選んだのだ。しかし1937年、日本軍が天津を占領。妻子をカナダに退避させ、ひとりこの地に留まったリデルは人道支援を続けようとする。やがて中国における外国人を取り巻く状況は悪化し、リデルは大勢の欧米民間人とともにウェイシン収容所に入れられてしまう。外界と隔絶したその施設で過酷な抑圧と体調不良に苦しむリデルは、“走る”ことで不屈の情熱と信念を示し、仲間や子供たちに尊い希望をもたらすのだった……。

日本軍占領下の中国を舞台にしたこの物語は、子供たちにいきいきと化学やスポーツの素晴らしさを教え、人種も世代も分け隔てなく他者を思いやり、敵兵のためにも祈りを捧げたリデルの人柄をあますところなく描き出す。そして本来は安息日のため走ることのできない日曜日に、リデルが悲壮な覚悟で“最後のレース”に身を投じていくクライマックスは、観る者の胸を締めつけてやまない。『炎のランナー』で世界中に鮮烈な印象を与えたリデルの寛容で高潔な人物像を、より深く知ることができる一作と言えるだろう。

リデルを演じるのは、アカデミー賞7部門を独占した『恋におちたシェイクスピア』やケイト・ブランシェットと共演した『エリザベス』で絶賛を博したのち、映画、演劇、テレビの幅広いフィールドで充実のキャリアを築き上げてきたジョセフ・ファインズ。このイギリスの実力派俳優が、アスリート引退後も信仰を貫いて走り続けた聖職者の軌跡を、繊細にして力強く体現した。リデルを慕うレジスタンスの青年に扮するのは、『サンザシの樹の下で』『疾風スプリンター』のショーン・ドウ。また、本作は『項羽と劉邦/その愛と興亡』『男たちの絆』のスティーヴン・シンと、カナダ人の監督兼プロデューサー、マイケル・パーカーの共同監督作品である。

STORY ストーリー

 1924年のパリ・オリンピックに英国代表の陸上選手として出場し、男子400メートル競技で金メダルを獲得したエリック・リデル(ジョセフ・ファインズ)。敬虔なクリスチャンである彼は、大学卒業後、宣教師として自らの出生地でもある中国の天津に渡った。しかし1937年、日本軍が天津を占領し、英国領事館はリデルとその家族に国外退避を勧告。人助けのために中国にやってきたリデルは現地に留まることを選択し、妊娠中の妻フローレンス(エリザベス・アレンズ)とふたりの幼い娘をカナダへ送り出す。

 日本軍に物資を徴収されたリデルは、赴任先の学校で他の避難者たちと暮らし始める。その苦境の中でも元ランナーのリデルは“走る”日課を忘れることなく、スポーツや授業を通して子供たちと触れ合うことに喜びを感じていた。レジスタンスの闘士である中国人青年ジ・ニウ(ショーン・ドウ)は、雇われ運転手としてリデルの高潔な人柄に接し、深い尊敬の念を抱いている。路頭に迷っていた幼い少年シャオシートウも、たちまちリデルを父親のように慕うようになった。ところが1941年12月、太平洋戦争が勃発。それ以降、リデルらを取り巻く状況は悪化の一途をたどっていく。

 ついに抑留されたリデルは、大勢の欧米民間人とともに山東省のウェイシン収容所へ送られた。収容所の指揮官である日本軍の少佐は、金メダリストであるリデルとのレースを望み、彼に体力をつけさせるために他の収容者よりも多くの食事を与える。しかしリデルは腹を空かせた子供たちにその食事を分け与え、少佐とのレースに敗北を喫した。それを知った少佐は激怒し、反抗した若者デヴィッドとともにリデルを独房に監禁するのだった。

 やがてリデルは衰弱しきった状態で独房から解放されるが、まもなく新たな事件が起こった。ニウとシャオシートウがデヴィッドをこっそり逃亡させたため、アメリカ人のヒューにその疑いがかけられたのだ。独房行きとなったヒューは気管支を患って重篤となり、リデルは彼の薬を調達するために少佐にレースの再戦を申し入れる。自らも深刻な病に蝕まれているリデルにはとても勝ち目はなかったが、収容所の仲間たちは彼の不屈の精神に心を動かされ、レース当日に全員で祈りを捧げる。しかし、安息日の日曜日にリデルが身を投じたその最後のレースの先には、思いもよらない悲劇が待ち受けていた……。

CAST キャスト

  • 1970年、イギリス、ウィルトシャー州生まれ。父親は写真家のマーク・ファインズ、母親は小説家のジェニファー・ラッシュ。兄のレイフ・ファインズは俳優と芸術一家のなか育つ。ヤング・ヴィク・ユース・シアターやギルドホール音楽演劇学校で学び、卒業後に様々な舞台を経験。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーにも参加した。『魅せられて』(96)で映画デビュー。1998年アカデミー賞受賞作『恋におちたシェイクスピア」ではウィリアム・シェイクスピア役を熱演し国際的に評価を得た。これにより全米映画俳優組合賞、放送映画批評家協会賞を同時に受賞。同年アカデミー賞にノミネートされた『エリザベス』では放送映画批評家協会賞のブレイクスルー賞を受賞。その他出演作に『スターリングラード』(01)、『レオポルド・ブルームへの手紙』(02)、『ヴェニスの商人』 (04)、『ハサミを持って突っ走る』(06)、『マンデラの名もなき看守』(07)、『DATSUGOKU -脱獄-』(08)、『ヘラクレス』(14)などがある。現在はHuluの人気シリーズ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」にも出演している。

  • 1988年、中国の西安で生まれ。2008年北京電影学院に入り、その後、チャン・イーモウ監督『サンザシの樹の下で』(11)で主演を務めた。その他出演作に『危険な関係』(14)『神なるオオカミ』(15)、東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門にて上映された『疾風スプリンター』(17)などがある。

  • イギリス、サウスポート生まれ。16歳のときマンチェスターで「ノーザン・バレエ」奨学金を授与され、バレエダンサーとして活動。ロンドンの名門ミュージカルスクール「マウントビューアカデミー・オブ・シアター&アーツ」にて舞台演劇を学ぶ。卒業後はイギリス、アメリカ、中国などの映画やテレビに出演しながら舞台女優として多岐にわたり活躍中。 出演作に「シャーロック・ホームズVSモンスター」(12)などがある。

  • 1970年、東京都出身。19歳のとき歌舞伎俳優であり、東映映画全盛期を背負った大スター、初代萬屋錦之介氏に弟子入りし役者の道を歩み始める。やくざ、侍、兵隊、刑事など様々な役柄をこなす。チャン・イーモウ監督『金陵十三釵』では南京進攻する日本兵役で出演。その他出演作に「鉄道員~ぽっぽや~」 (99) 「実録・関東やくざ戦争2 修羅の代紋」(04)「TAJYOMARU」(09)などがある。

STAFF スタッフ

  • 1951年、マカオ生まれ。テレビ局で番組ディレクターとして活躍した後、「スネーキーモンキー 蛇拳」(78)など映画の脚本にも参加し、『Yuan jia』(79)で監督デビュー。香港ニューウェイヴと総称される若手監督の仲間入りを果たした。『男たちの絆』(86・未)では第6回香港映画賞で最優秀監督と最優秀監督にノミネートされた。監督作に「項羽と劉邦/その愛と興亡」(93)などがある。

  • 1952年、香港生まれ。香港プロフェッショナル・フィルム・フォトグラファーズのメンバーであり、ジョニー・トー監督とのコラボレーションで有名。代表作に『ザ・ミッション 非情の掟』(00)『Needing You』(01)『エグザイル/絆』(06)『MAD探偵 7人の容疑者』(07)『タクティカル・ユニット 機動部隊 -絆-』(09)『ホワイト・バレット』(16)などがある。